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Photo by Munetaka Onodera

三鷹の家

成熟した住宅地に溶け込み、安全な住宅

「文士の街」と知られ、井の頭恩賜公園の近くのモダンで閑静な住宅地に、この住宅は建っている。このあたりは大正から昭和初期に文豪が活躍し、立派な洋風の建物などがつくられてきた。今も雰囲気のあるモダンな住宅が多く、成熟した住宅地である。

外観には周囲のモダンな要素を取り入れ、この住宅地に溶け込み、またセキュリティ高い印象の住宅を目指した。

陰影のある横葺きの黒い外観は、木が多い住宅地の木陰の中で良く馴染んでいる。

夜になるとハイサイドライトとドーマーからの柔らかな光が漏れ、行灯のように周囲を照らす。夜遅くに帰って来る主人を温かく迎える光となる。

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「ゆるやかに繋がる隙間」がつくる豊かな住環境

この住宅地は、建ぺい率40%、容積率80%の制限がある。つまり、最大限広く建てようとすると一般的な木造住宅では、1階と2階がほぼ同じ面積・つくりをした総二階の住宅になる。このような条件の中で建物の構成を工夫し、豊かな住環境をつくることを目指した。

上下に建物の一部をずらし、階段と吹抜部分の「ゆるやかに繋がる隙間」をつくることとした。

​隙間から家族の声や気配を感じることができる。

ずらした部分にハイサイドライトを、建物の中心の吹抜にドーマを設け、光を取り入れた。いろいろな部屋から光が差込み、昼間は常に明るい。

風は隙間を通り抜け、吹抜部分の換気設備から外に出る。常に建物全体の空気を入れ替えることができる。

「新しい生活のしかた」に柔軟に対応した構成

居住者は、これまでのように「くつろぐのはリビング」、「仕事や勉強、着替えるのは個室」というような決まった使い方ではない「新しい生活のしかた」をイメージされており、それに柔軟に対応できるような構成を目指した。

建物の中央のホールは、浴室から出てから着替える場、置き畳を置いて1階リビングとは違ったくつろぎ方ができる場ともなる。一般的には個室にある要素を外に出し、クロゼットはホールに、机は1階のリビングにワークスペースとして設置した。

大きなワークスペースのカウンターでは、仕事や勉強をみんなで行うことができる。

また、2.7mある大きなダイニングテーブルも食事だけではなく、色々な使い方ができる。

このように居住者が家族内で「シェアできる仕掛け」を用意することで、効率よく建物を活用できる。

それぞれの場所から「ゆるやかに繋がる隙間」を通じてお互いの気配を感じることができる構成とした。

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「シンプルな仕上」に木の要素を組み合わせ、様々な雰囲気の空間をつくる

外観は堅牢な黒いガルバリウムという仕上の中に、人を迎える玄関周りは柔らかな印象を演出する杉板下見張りという、わかりやすい構成とした。

内部は白い「シンプルな仕上」の中に、木を使い一体的につくった家具や階段を「立体的に組み込む」ことで、「ずらす」といった建物の構成をわかりやすくした。

床や建具も木を使い、落ち着いた雰囲気が必要な場の壁や天井には無垢の木を使用している。シンプルながらも様々な雰囲気の空間をつくることを目指した。

住宅の使われ方は常に変化していくが、それに柔軟に対応できる多様な仕掛けや場があることで、これから楽しく住まわれ続けていくのではないかと思う。

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意匠設計:田村真一建築設計事務所

構造設計:桑島由美子建築設計事務所

​施工:株式会社 山菱工務店​

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