第38回住まいのリフォームコンクール 一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会会長賞

Photo by tada yuko

伝統的な主屋をサポートする耐震改修
この住宅は、姫路の市川が流れるほとりの集落に増築、改築を繰り返しながら100年以上前から建っていた。
集落の大切な景観の一部であり、非常に大切に住まわれてきたことがわかる伝統構法の木造住宅である。

耐震改修するにあたり、主屋を今の様子のまま残したいという強い希望があった。
また、暗く寒い住環境を改善し、バリアフリーにも配慮することが求められた。

「主屋部分」は、内装・建具なども価値が高く、この建物の本質的な部分であり、貴重な残すべき部分である。
この部分には意匠が変わる耐震補強をせず、耐震性能を上げるために周囲の建物を主な改修範囲の「サポート部分」として位置づけ、耐震要素を追加し、主屋と一体化することで建物全体の耐震性能をあげることにした。
子供たちが独立し利用率の低くなった2階の使い方・荷重に制限を掛け、積載荷重にも配慮することにした。
伝統構法の構造特性にあった限界耐力計算を使った耐震補強計画を行い、礎石立ての基礎まま、荒壁パネルや耐震リングを配置し、震度6強まで耐える耐震性能を確保した。

​「サポート部分」は、水廻りの更新及び補修も必要な状態であったので、その部分を集中して改修を行った。
この部分はもともと暗く寒い部分でもあったが、改修することで明るく、温かい居住環境をつくり出す要素となる。
また、「サポート部分」には、更新期間が短い浴室、キッチン、トイレなどの設備機器、ウォークインクロゼットや棚などの収納をインフィルとして配置した。
今後もこのインフィルを更新していくことで、大きな改修を行うことなく住環境の変化に柔軟に対応することができる。そのため、「主屋部分」は将来的にも今の様子のまま残っていくことが可能となった。

​広い民家の場合すべてを改修すると非常に高額なコストが掛かりプロジェクトとして成立しないことが多い。「主屋部分」と「サポート部分」のように明確に範囲を設定し、改修範囲を限定することで、コスト的にもメリットがある合理的な改修を目指した。

限界耐力計算を使わない一般的な耐震補強計画ならば、主屋部分の壁は解体され、新たな壁を多数設置する必要があり、「主屋部分」の様子は一変する。基礎の改修もおこなうと、さらなる大規模な改修工事になりコストも膨大になる。伝統構法に適した耐震改修計画と綿密に建物を分析した改修設計を行うことで、改修工事を最小限につまりコストを最小限におさえながら、建物の性能を上げることができた。

​伝統構法の改修は、今の木造住宅と構法が異なるため、専門的な調査方法や施工技術が必要となる。
​伝統構法の改修設計の実績のある意匠設計事務所と構造事務所、伝統構法の工事の実績のある工務店が一体となって設計から工事まで行うことが大切と考える。

蔵が見える明るいダイニング・キッチン、バリアフリーに考慮したトイレや浴室が配された「サポート部分」、それらが「主屋部分」と空間的にも一体化することで光が入り、風が抜け、視線も通るようになった。断熱改修、空調設備の更新も行い、暗く寒い住環境は改善され、床の段差も緩和された。

快適な住環境になり、長年住まわれてきた建物の良さをより引き出している。
​これから何世代にも渡って大切に住まわれ続けていくのではないかと思う。

意匠設計:田村真一建築設計事務所

構造設計:有限会社 桃李舎

​施工:松岡建築事務所​