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第30回住まいのリフォームコンクール 独立行政法人 住宅金融支援機構理事長賞

1-14.Photo by tada yuko

伝統構法を生かした美しい耐震改修

兵庫県加古川市の瀬戸内海に近い場所に建つ、約築80年の木造住宅の改修を行った。

構造、設備の老朽化、住まい方の変化による不具合を、合理的な補強方法で解消し、意匠的にも改善することを目指している。

 

この住宅は阪神・淡路大震災を経験しており、耐震性能の向上は重要であった。

礎石建ての基礎を持つような伝統構法をの木造住宅では、一般的な耐震改修の手法だと、布基礎の新設が必要など大掛かりな工事で費用も高額になり、開放性や伝統的な民家の意匠が損なわれがちになる。

そこで今回の改修では、限界耐力計算にもとづき、礎石建ての基礎を残すなど伝統構法を生かす耐震補強を行った。耐力壁になる格子壁を使うことで開放性を維持し、障子紙を通したやわらかな光で民家の魅力を取り戻している。

 

2階には光と風の道となり、行灯のような照明器具にもなる障子紙を貼った格子壁を利用した「通風塔」を設け、室内環境を改善している。

納戸や浴室など、劣化が激しい部屋の用途を他の部屋に移し、その部分を集中的に改修することでコストを抑えた。

 

また、高齢化した夫婦の生活場所が1階になったことを踏まえ、部屋の用途を整理することで、使いづらかった部屋も一体的に利用しやすくし、新たな住まい方に対応している。

この住宅が建つ集落にも同じような住宅が多数残っているが、近年建替えられることが多い。耐震診断の受け改修を検討するが、一般的な構法をでは高額な工事費かかり、耐力壁の増加により開放性や使い勝手が悪くなるということで、安価な住宅に建替える選択をすることも多くあるようだ。

これらの民家は重要文化財ではないが、大工の技術力や材料の品質の高い住宅であり、適切に評価してほしい。

 

適切に改修することでコストも抑え、魅力も取り戻すことが可能ということが一般的に広まることは、景観の維持や既存ストックの活用という意味でも重要と思われる。

意匠設計:田村真一建築設計事務所

構造設計:有限会社 桃李舎

​施工:山本博工務店

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